副長土方の机の上には書類の山が出来ていた。
 うず高く積まれた書類の向こうから紫煙が立ち上っているので土方がいるのだと知れるが、それがなければ人がいるのか居ないのかさえ分からない。それぐらいに高く大量に積まれていた。

「ふくちょう、また、増えました……」

 器用に足でふすまを開き、両手で書類を抱えた山崎が入ってくる。
 山崎も働きづめで、目の下には墨で描いたような隈で真っ黒になっていた。

 机の上に書類が乗る余地などとうに無い。
 土方の横に書類を置いて、上から数枚取り上げる。
「五番隊から十番隊までの武器申請です。これは今日中に通さないと予算を下ろせないと勘定方からきつく言われていますので、これだけは先にお願いします……」

 ここ数日、煙草のけむりしか食べていない土方が、彼の恋人に負けないぐらい死んだ魚のような眼をして山崎に答える。
「それは、近藤さんじゃねぇと許可できねぇだろ」
 いつもなら蹴りつけながら怒鳴る所だが、そんな元気なんかとっくにない。頭をふらふらさせながら「届け先間違えてんじゃねぇ。腹切れ」というのがやっとだ。

「局長は例によって行方不明です」

 書類の上を滑っていた土方のペンが止まった。

「ゆくえ、ふめい……?」
「はい。たぶん志村家だとは思いますが……」
 天井裏に潜んでいたり床下に潜っていたり落とし穴にはまっていたりするので見つけるのは一苦労だ。隊士に探させてはいるがいまだ見つかっていない。
 そう答えてもう一度山崎は書類を差し出す。
 真選組は武器がないとどうしようもない。身を守れもしない。
「お手数ですが、これだけは先にお願いします」

 土方は虚ろに書類を見下ろしていたが――――――。


「んも――――――勘弁ならねぇ!!!! こんなことばっかやってられっかァァァァァァアアアアアアア!!!」

 ばーん!!

 星一徹もかくやといった勢いで机をひっくり返して立ち上がった。多種多様な書類が紙吹雪よろしく部屋中に舞う。


「ふ、副長――――!??」

「もーいい!! もー勘弁ならねぇぇ!!!」
 突然絶叫した土方に、山崎が目を白黒とさせた。

「なんべん言ってもなんべん言ってもストーカーにせい出しやがって! あのゴリラ殺して俺も死んでやらァァァ!!!」

 山崎は腕をあげ舞落ちてくる書類から顔を庇って土方を見上げる。

 ここんとこ、常識外れるぐらい忙しかったもんねぇ。なのに局長ったら毎日毎日ストーカーにせい出しちゃって。土方さんが怒るのも無理はないって。
 土方から立ち上る尋常ではない怒りと殺気の波動に気おされて、山崎の頭がほのぼのとした方面に現実逃避してしまった。

 走り出そうとする土方にしがみついて止める。
「たた、た、大変だ――副長が乱心したァアァァァ!――――皆、来てくれェェ――――――!!!」


 ここのところテロ活動も無く平和だったのに、よりにもよって屯所の中で爆弾が炸裂した。土方十四郎という厄介な爆弾が。





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