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「はいはい御二人さん! そのぐらいにしてください! お鍋の準備しますからね」
予定より遅くなってしまった土方が夕食に選んだのは水炊きだ。
野菜や魚を手早く切り揃えた新八が、ざる一杯に持ってテーブルに置いた。手際よく土鍋や小鉢も並べられていく。
「おう……」
そう言えば腹が減った。二人して振り上げた拳を下ろす。
新八の料理は美味いのだ。たたが鍋といえども旨みが違う。
メインが肉では無く魚だったから大した騒ぎはなかったものの、小競り合いを起こしつつ平らげる。
思い思いに食後の休憩を取っている中、新八だけが動き回り後かたずけをする。洗い物を済ませてから彼はリビングに顔を出した。
「んじゃ僕そろそろ帰りますね」
「あ、新八! 私もお前んちに行くアル」
神楽が手をあげながら立ち上がる。
「何だ神楽? 新八んち用事でもあんのか?」
「用はないね。でも私がいたら、お前らずっこんばっこんやりにくいデショ? 今まで一回もずっこんばっこんしてないみたいだし」
「ず……!!??」
土方が思いっきり絶句し、そして。
ひゅ、と閃光が空気を切って銀時の首に傷を作った。土方の剣だ。
皮一枚だけで済んだが、明らかに殺意の籠った一閃だった。
「かーぐらちゃーん、言葉にはマぁジで気を付けてね〜。大切な銀さんが大串クンに殺されちゃうよ〜」
両手を挙げて抵抗の意思のない事を表しつつ言う。
「もういっぺん聞くぞ。てめぇ、子供にどんな教育してんだぁ? ぁあ!? さっさと答えねぇと見苦しい天パ胴体から切り離してやんぞコラァ!」
街で攘夷志士を追い回す時と同じドスの利いた声だが、顔は耳まで真っ赤にして眼尻に涙が浮いている。
「別に銀ちゃんから聞いたわけじゃないネ。女の子は耳年増っていうのが世の中のセオリーアル。世間の常識では五回目のデートでHするって姐御の友達が言ってたヨ。でもお前らもう付き合って三か月にもなるのに一回もそんな場面に遭遇してないアル。こっそり覗いてやろうと楽しみにしてたのに。だから私思ったね。私がいるからズコバコできないって。我慢させるの可哀そうだから、新八の家に泊まることにするアル。私空気読める女ネ」
「読めてねぇぇぇぇ!! つか、おいおいおいおいおい、二度とその友達と接触すんじゃねーぞ! 誰だ子どもにんな出鱈目教えやがったのは! そういうのに一般もクソもねーの。なるようになるのがいいの!」
銀時は流石に声を荒げて反論した。
「んじゃ、銀ちゃんたちはまだなるようになってないの? いつなるアル? いつになったら覗けるアル?」
「おい、ガキ」
「ガキって呼ぶなマヨ」
「お前こそマヨって呼ぶな。その友達のいうことは全部ウソだから、ちゃんと忘れとけよ」
「マジでか?」
不審そうな顔をする神楽。新八が助け船を出した。
「神楽ちゃん、銀さんがいうのは信頼できないけど、今まで何人もの女の人と付き合ってきた土方さんがいうんだから間違いないよ。嘘だったんだよ」
「……なるほど。イチリある」
「んで、俺とこいつがんなことすることは一生無いから、覗くチャンスをうかがうつもりならやめとけ。時間の無駄だ」
「えええええ!? どうして!? マヨ、銀ちゃんと別れるつもりアルか!?」
「銀さん、捨てられちゃうんですかァァァ!!?」
神楽と新八が同時に声を張り上げた。
「いや、そうじゃねーがよ……」
土方が眉根を下げて銀時を見る。
「俺ら男同士だぞ? 確かに付き合ってはいるが、んなことするわけねーっての。それよりお前ら、どうして俺が捨てられるってのが前提なんだよ! 逆パターンもあるかもしんないじゃん!」
「何言ってるの銀ちゃん。マヨはどうしようもなくマヨラーだけど、顔良し金有り地位有りの甲斐性のある男アル。こんな良い人手放したら、銀ちゃん一生後悔すると思う。でもマヨからしたら半分無職の銀ちゃんなんて炉端の花ネ。摘んで花瓶に入れて飾ってる間はいいけど、枯れてきたら生ゴミと一緒に処分される運命アル」
「やなこというなァァァァ!!」
いささか本気に追いかけまわす銀時から逃げ、神楽と新八は万事屋を後にした。
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