「ったく、あいつらはよォ……」
 口の中で文句を言いつつリビングに戻る。
 土方は煙草の煙を旨そうに吸っていた。
「しかし、ここはいつ来ても賑やかだな」
 神楽が騒ぎ銀時が騒ぎを拡げて新八が突っ込みを入れる。
「たった三人だってのが信じられねぇぐらいだ」
「三人じゃねぇだろ」
 銀時の掌が土方の頭に乗った。
「四人だ。お前も騒ぎの一端を担ってるって忘れんなァ。俺達のせいばかりにしようったって、そうはいかねぇよ」


 あぁ。
「そうだな」
 こんなところが酷く好きなのだと思う。


「さーぁ、さっさと寝ちまうか。どうせ仕事中毒の副長さんは睡眠とれてねーんだろ?」
「ん……、この本読んでから寝るから、先に寝ちまっていいぞ」
 土方が持ち込んできた小説だった。表紙には隣のペドロとある。よほどあの映画を気に入ったのだろう。
 万年床の銀時の蒲団の横に土方の蒲団を敷きながら、銀時は苦笑するしかない。
「おい、座イスはどこにあんだ?」
「この家にそんな小洒落た品物があると思うかぁ? 布団あるんだからねっ転がって読めよ」
「座イスのどこが小洒落てんだ。つか布団で読むなんて行儀の悪い真似ができるかよ」
「型物だねぇ……。ほら」

 銀時は土方の腕を引っ張って、厚い胸で受け止めた。
 壁にもたれた銀時に背中を預けて土方がよりかかる。
「これでいいだろ?」
「座り心地の悪ィ椅子だ」
「てめ、人の好意をなんだと思ってやがる」
 ぶつぶつと文句をいうものの、土方を払いのけはしない。土方も文句を言ったものの大人しく胸に凭れて本を開いた。

 背中の熱が、心音が気持ちいい。
 本を開はしたものの、きっと、すぐ眠ってしまうのだろうと思った。予想通り、日々酷使している体にすぐに眠気が訪れ、瞼が落ちた。

 脱力して重たくなった体に腕を回し、銀時は首筋に唇を落とした。

 二人の触れ合いはこの程度のものだった。
 お互いに凭れかかったり、指を絡ませて手を繋いでみたり。
 小学生の恋みたいだったけど、まぎれもなくそれは大切な感情で、隣に座るにんげんは掛け替えのない存在だった。




 そんな関係のままでよかった。
 どんなに足掻こうと二人は男同士で、お互いの体を曝すことで相手の気持ちが萎えてしまうのを恐れていた。




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