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翌日。
土方は屯所の自室で書類整理をしていた。
また総悟が町中でバズーカぶっ放しやがったのか。建物の修理代の請求書を見て頭を抱えたくなる。
しかし今月はまだ大人しいものだった。
この調子でいけば請求額も予算内で収まる。
「珍しい事もあったもんだ」
良い事がありそうな気がして、土方は機嫌よく煙草に火をつけたのだが。
「土方さん!」
すぱーん! 良い音を立ててふすまが開かれた。
総悟だ。
「旦那とズコバコやってねェってマジですかィ!?」
土方は一瞬にして前言を撤回し、今度こそ頭を抱えた。
「いきなり何ぬかしてやがる」
「チャイナに聞いたんでさァ。んで、マジなんですかィ? 正直に答えてくだせェ」
ちゃ、と総悟がバズーカを構えた。答えなければすぐにでもぶっ放すのだろう、
「だー! 屯所で構えんじゃねぇ! 本当だ!!」
総悟は無表情のままだった。
だけど、彼の頭の中ではウエディングベル的な祝いの鐘が鳴り響いていた。
総悟はずっとずっと土方を見ていた。それが恋だったのだと自覚したのは土方の目が銀時を追うようになってからだ。
焦った。どうにか土方の銀時への想いを壊して自分に目を向けようとしたけど、何をしようとも、土方にとって総悟は弟でしかなかった。
彼の目は全く総悟を見やしない。総悟は荒れた。土方の命を狙おうとする回数が増えた。本気になることはついぞなかったけど。
二人が両想いになるのを見ていることしかできなかった。
しかし諦めるつもりはなかった。
二人の間に些細な亀裂でも走ろうものなら、すかさず亀裂を叩き割って二人の絆を断ち切ってやるつもりだ。
長期戦になるのは覚悟していたが、しょせんは色恋に血気ばった十代の若造だ。いつまでも指をくわえているだけでは満足できない。
銀時が触れていないのであれば、綺麗な体のうちに自分の熱を刻みこんでやろう。
物騒な総悟の思惑など夢にも思わず、土方は忌々しそうに口を開いた。
「だいたい、どうしてやってるとか考えるんだテメーらは! 男同士だっつってんだろうが!」
「へー。たまるモンはどうやって処理してんですかィ?」
「んなもん女買いに行きゃいくらでも処理できる」
「へーぇ、浮気前提で付き合ってるたぁ意外でさァ」
「浮気……?」
土方は煙草を灰皿に押しつけながら、ふ、と笑った。
「でかくなったと思ってたが、意外とガキのまんまの部分もあるんだなぁテメェは」
女を買う――風俗に行くことがイコール浮気だと言えるのは女と子供だけだ。
潔癖な、子供の部分を見つけて喜んだのだが。
「よっと」
いきなり伸しかかってきた総悟に押されて、ごん、と畳に頭を打ち付けた。
「……ってぇ……! にしやがる総悟!」
「男同士だから嫌がるなんて、体に面白いモンでも隠してるんじゃないかと思いやして」
「ねーよ! つか一緒に風呂入ったことあんだろが!」
「テメーの裸凝視したことなんざねー。気色悪い事ぬかすな土方コノヤロー」
「ぶっ殺すぞ! こ、コラ、手入れるんじゃねー!」
ズボンから服を引っ張り出して、掌が直に素肌に触れてくる。
あきらかに襲われているのだけど土方にはまるで危機感がなかった。
飼い犬の大型犬がじゃれついてきたような、弟が戯れに兄にくっついているような、その程度の認識でしかなかった。
いける。
総悟はにやりとほくそ笑んだ。
ベルトを器用に片手で外し、引き抜こうとした所で。
ひょ、と総悟の体が浮いた。
「まーたお前はトシをいじめて。仲がいいのも結構だが仕事中だぞ総悟ォ」
猫の仔みたいに総悟の首根っこを掴んで、うはははと笑うのは近藤だ。
「「近藤さん」」
土方と総悟の声が同時に局長を呼ぶ。そして総悟の舌打ちが続いた。後少しだったのに。
ちなみに、近藤もまた総悟が土方に懸想してるなど微塵足りとも気がついてなかった。弟が兄に甘えているぐらいの認識しかなかった。
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